徹底解説

ファンネルプロット

ファンネルプロットとは

ファンネルプロットとは


ファンネルプロット(Funnel Plot)は,メタアナリシスにおいて出版バイアスやその他の系統的な誤差を視覚的に検出するために使用されるグラフです.基本的には縦軸に標準誤差,横軸に効果量を設定します.

ファンネルとは漏斗という意味になり,漏斗を反転させた下向きに広がった形のグラフになります.

》標準誤差とは

出版バイアスとは

出版バイアスとは,研究の結果がその出版される確率に影響を与えるバイアスの一種です.主に統計的に有意な結果(つまり、ポジティブな結果)や予想される方向性の結果を持つ研究が出版される傾向が強い一方で,統計的に有意でない結果(ネガティブな結果),予想外の結果,あるいは曖昧な結果を報告する研究が出版されにくいことを指します.このようなバイアスが存在すると,研究分野全体の理解が歪められ,誤った科学的結論が導かれるリスクがあります.

メタアナリシスでは公表されている研究結果を使用して分析を行うことから,必ず出版バイアスの可能性を確かめて,歪んだ結論を導いていないか検証する必要があります.

出版バイアス以外にも統計解析では,様々なバイアスが含まれている可能性があります.陥りやすいバイアスについては,以下のページで紹介しています.

》陥りやすいバイアス

ファンネルプロットの構成要素

ファンネルプロットの構成要素

ファンネルプロットは,上記のような要素で構成されています.

プロットは各研究の標準誤差と効果量を意味します.縦軸に垂直の補助線は,統合効果の効果量を示します.斜めの補助線は,垂直の補助線のy=0の地点から,全研究の効果量の信頼区間のうち,最小値・最大値を結んだ線になります.

フォレストプロットの見方

ファンネルプロットの見方

出版バイアスがないと思われる理想的なファンネルプロットは,左側の図のように三角形の中に偏りがなくプロットが分布します.三角形状に分布するということは,精度が低い研究(標準誤差が大きい研究)ほど効果量がばらつくという至極当然な結果を意味します.

出版バイアスの存在が疑われる場合は,右のグラフのようにプロットの分布に偏りが生じます.上記の例では標準誤差と効果量が大きい結果となる研究結果が欠落しているため,この分野においてそのような結果がネガティブである場合,分析対象の研究にそもそも偏りがある可能性を疑う必要があります.

特に逆三角形のような分布となっている場合は,精度が低い研究(標準誤差が小さい研究)ほど効果量のばらつきが見られないため,都合の悪い結果となる研究が抽出できていない,もしくは公表されていないと考えることができます.

ファンネルプロットの作り方

ファンネルプロットは,統合効果の算出や信頼区間が必要なため,Excelなどの表計算ソフトで作成することは難しいです.ファンネルプロットはRやPythonなど,メタアナリシスを実行できる統計用ソフトで作成されます.

統計解析アプリStaatAppでは,分析対象のデータを読み込み,クリックするだけで簡単にメタアナリシス・ファンネルプロットの作成をすることができます.

》StaatAppを用いたメタアナリシス
》統計解析アプリStaatApp

統計解析アプリStaatApp

ファンネルプロットとメタアナリシス

ファンネルプロットはメタアナリシスの出版バイアスを評価するためによく用いられ,メタアナリシスで最も代表的なグラフであるフォレストプロットと同様に論文に記載されることが多いです.

メタアナリシスやフォレストプロットについての詳細は以下のページで紹介しています.

》メタアナリシスとは