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【論文実践】クロス集計表・カイ二乗検定・ロジスティック回帰分析 – 高齢入院患者におけるフレイルと非自宅退院の関連に関する研究例

本記事では,StaatAppを用いて,高齢入院患者におけるフレイルと非自宅退院の関連をテーマに,患者背景の確認,クロス集計表とカイ二乗検定,単変量・多変量ロジスティック回帰分析,さらに感度分析までを一通り解説します.また,得られた結果をどのように論文本文や表に落とし込むかについても,実際の記載例を交えて紹介します.

》StaatAppとは

研究設定例

本例では,高齢入院患者におけるフレイルの有無が非自宅退院に与える影響を検討します.解析として,患者背景の記述統計,クロス集計表とカイ二乗検定,単変量・多変量ロジスティック回帰分析を実施します.さらに感度分析として,フレイルの定義変更(CFS 4以上)およびフレイル区分(ロバスト/プレフレイル/フレイル)を用いた解析も行います.研究テーマとサンプルデータの設定は以下になります.

●研究テーマ
 「高齢入院患者におけるフレイルと非自宅退院の関連」

●設定
 ・対象:340名(65歳以上の入院患者)
 ・主要説明変数
   フレイルの有無:Clinical Frailty Scale(CFS)5以上をフレイルありと定義
 ・感度分析で用いるフレイル指標
   CFS 4以上をフレイルありとした定義変更
   フレイル区分:ロバスト/プレフレイル/フレイル
 ・アウトカム
   非自宅退院の有無:非自宅退院=1,自宅退院=0
 ・共変量
   年齢
   性別
   Charlson併存疾患指数
   eGFR
   認知機能低下の有無
   入院前ADL低下の有無
   低栄養リスクの有無
   過去1年入院歴の有無
   入院形態(救急 / 予定)
 ・尺度特性
   二値データを含む観察研究データ
   主要アウトカムは二値変数(非自宅退院あり/なし)
   主要説明変数は二値変数(フレイルあり/なし)
   共変量として連続変数・カテゴリ変数を含む

StaatAppでの統計処理手順

Step1:データの取り込み

StaatAppを起動して,データを取り込みます.本例で用いるサンプルデータは以下のようになります.

サンプルデータ

データの取り込み方法は以下のページで紹介しています.

》StaatAppの基本操作

Step2:記述統計量の算出

基本統計量を算出します.学術論文ではTable1と呼ばれる患者背景として,記述統計量を算出します.「基本統計量」→「基本統計量」で患者背景を算出する画面に遷移します.

データ選択画面で,以下の変数を選択します.

基本統計量のデータ選択

サブグループに”フレイル”を選択します.

サブカテゴリーの選択「

「患者背景」設定画面で,「患者背景」をONにして以下のように各データ種別にあった項目に設定します.

患者背景の変数選択

「解析実行」ボタンをクリックして,以下のようにフレイルあり/なしの基本統計量(患者背景)を算出します.

患者背景の解析結果

Step3:クロス集計表の作成・カイ二乗検定

フレイルあり/なし,非自宅退院あり/なしごとにクロス集計およびカイ二乗検定を行うために「その他」→「クロス集計表」を選択して,クロス集計表用のウィンドウを表示します.

クロス集計表の選択

データ選択画面で以下のように,表側列,表頭列を選択します.

クロス集計表のデータ選択

解析実行ボタンをクリックすると解析結果として,クロス集計表・カイ二乗検定・オッズ比などが表示されます.

クロス集計表の解析結果

小数点以下の有効桁数を5としているので,カイ二乗検定のp値は0.00001以下となり非自宅退院率はフレイルあり/なしに有意であることがわかります.

Step4:単変量ロジスティック回帰

ロジスティック回帰分析を行うために,カテゴリ変数をダミー変数に変換します.ツールバーの「置換」ボタンを選択して,以下のように変換するカテゴリ変数を選択します.「One-Hotエンコーディング」をONにして,「実行」を選択します.

置換機能の実行

カテゴリ変数をダミー変数に置換したら,ロジスティック回帰ウィンドウを表示します.

ロジスティック回帰分析の選択

データ選択画面で”非自宅退院_あり”を目的変数に設定します.説明変数は”フレイル_あり”のみを選択します.

ロジスティック回帰分析の解析対象の選択(単変量)

解析実行を行い解析結果を表示します.係数表にp値と調整オッズ比,95%信頼区間が表示されるので単変量ロジスティック回帰の結果として,記録しておきます.

ロジスティック回帰分析の解析対象の選択(単変量)

p値が0.05以下なのでフレイルは非自宅退院に影響があることがわかります.

同様に対象の説明変数を順番に設定して解析結果を出力します.

Step5:多変量ロジスティック回帰

ロジスティック回帰画面で,対象の全ての説明変数をセットして解析を行います.以下のような結果を得ることができます.

ロジスティック回帰分析の解析結果(多変量)

”フレイル_あり”のp値が0.05以下であることから,他の影響を考慮した場合でも,非自宅退院に影響を与えていることがわかります.

Step6:感度分析(追加分析)

フレイルの定義を変更して感度分析を行います.まずはフレイルの定義をCFS4以上(主解析は5以上)として分析を行います.主解析の多変量ロジスティックで用いた”フレイル_あり”から”フレイル_CFS4以上”に変更して,再度解析を実行します.

感度分析の結果

調整オッズ比0.897(95%CI 0.461–1.742),p=0.748であることからCFS4以上で定義した場合、非自宅退院との独立した関連は認めなかったということがわかります.

同様にフレイルを3つのカテゴリ変数(ロバスト・プレフレイル・フレイル)として,感度分析を行います.

ロジスティック回帰分析の説明変数に,プレフレイルとフレイルを示すダミー変数を選択します.※ロバストを示すダミー変数は多重共線性のため,参照カテゴリとします.

解析実行すると以下のように結果が表示されます.

感度分析の結果2

フレイル群の調整オッズ比は1.70(95%CI 0.81–3.56, p=0.161)であり、プレフレイル群の調整オッズ比は0.51(95%CI 0.24–1.10, p=0.088)であったことから,3区分による解析では、主解析でみられた明確な関連は再現されなかったことがわかります.

ここまでで,StaatAppを用いた解析手順の説明は終了です.

日本語論文の記載例

解析結果をもとに,日本語論文への記載例と添付する表のサンプルを紹介します.

対象と方法(Methods)

本研究は,65歳以上の高齢入院患者340例を対象とした後ろ向き観察研究である.入院時にClinical Frailty Scale(CFS)を用いてフレイルを評価し,主解析ではCFS 5以上をフレイルありと定義した.

主要アウトカムは非自宅退院とし,自宅退院を対照として,回復期リハビリテーション病院,介護施設,療養病院,他院への転院を非自宅退院に含めた.

収集した共変量は,年齢,性別,Charlson併存疾患指数,eGFR,認知機能低下の有無,入院前ADL低下の有無,低栄養リスクの有無,過去1年入院歴の有無,入院形態(救急/予定)であった.

連続変数は平均値 ± 標準偏差,カテゴリ変数は症例数(%)で記述した.フレイルと非自宅退院の関連については,まずクロス集計表を作成し,カイ二乗検定により群間比較を行った.その後,非自宅退院を目的変数とする単変量ロジスティック回帰分析を施行し,さらに多変量ロジスティック回帰分析により交絡因子を調整した上で,フレイルの独立した関連を評価した.

多変量モデルには,年齢,性別,Charlson併存疾患指数,eGFR,認知機能低下,入院前ADL低下,低栄養リスク,過去1年入院歴,入院形態を投入した.カテゴリ変数の参照カテゴリは,フレイルなし,女性,認知機能低下なし,入院前ADL低下なし,低栄養リスクなし,過去1年入院歴なし,予定入院とした.

感度分析として,フレイルの定義をCFS 4以上に変更した解析,およびフレイルをロバスト,プレフレイル,フレイルの3区分として扱った解析を追加で実施した.結果はオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)で示し,統計学的有意水準は両側5%とした.

結果(Results)

1. 患者背景

対象340例のうち,非自宅退院群は95例,自宅退院群は245例であった.非自宅退院群は,自宅退院群と比較して高齢であり(81.3 ± 6.8歳 vs. 79.1 ± 6.7歳),Charlson併存疾患指数も高い傾向を示した(2.18 ± 1.44 vs. 1.82 ± 1.33).eGFRは両群で同程度であった.

性別分布はほぼ同様であったが,認知機能低下あり(34.7% vs. 22.9%),入院前ADL低下あり(46.3% vs. 22.9%),低栄養リスクあり(34.7% vs. 27.8%),過去1年入院歴あり(42.1% vs. 29.8%)の割合は,いずれも非自宅退院群で高かった.救急入院の割合は両群で同程度であり,在院日数中央値は非自宅退院群で長かった(14日 vs. 11日).

論文記載表1

2. クロス集計表

フレイルの有無と非自宅退院との関連をクロス集計により検討したところ,非自宅退院率はフレイルあり群で47.5%,フレイルなし群で17.6%であった.両群間には有意な関連を認めた(カイ二乗検定,p < 0.001).また,フレイルあり群の非自宅退院の粗オッズ比は4.24(95%CI 2.57–6.99)であった.

論文記載表2

3.ロジスティック回帰分析

単変量ロジスティック回帰分析では,フレイル,年齢,Charlson併存疾患指数,認知機能低下,入院前ADL低下,および過去1年入院歴が非自宅退院と有意に関連していた.
多変量ロジスティック回帰分析では,年齢,Charlson併存疾患指数,eGFR,性別,認知機能低下,入院前ADL低下,低栄養リスク,過去1年入院歴,入院形態を調整後も,フレイルは非自宅退院と独立して関連していた(調整オッズ比 2.57,95%CI 1.44–4.58,p=0.001).また,年齢(調整オッズ比 1.05,95%CI 1.01–1.09,p=0.023)および入院前ADL低下(調整オッズ比 2.58,95%CI 1.49–4.49,p<0.001)も独立した関連因子であった.一方,認知機能低下は関連傾向を示したが,統計学的有意差には至らなかった(調整オッズ比 1.76,95%CI 0.98–3.18,p=0.059).

論文記載表3

4. 感度分析

感度分析1として,フレイルの定義をCFS 4以上に変更して再解析したところ,主解析で認められたフレイルと非自宅退院との関連は再現されなかった(調整オッズ比 0.90,95%CI 0.46–1.74,p=0.748).
感度分析2として,フレイルをロバスト,プレフレイル,フレイルの3区分で扱ったところ,ロバスト群と比較したフレイル群の調整オッズ比は1.70(95%CI 0.81–3.56,p=0.161)であり,プレフレイル群の調整オッズ比は0.51(95%CI 0.24–1.10,p=0.088)であった.3区分による解析では,非自宅退院に対する明瞭な段階的関連は確認されなかった.

論文記載補足表1

表はStaatAppの解析結果をコピーして,Excelなどで体裁を変更することで作成可能です.ただし,以下の点に気を付けると良いです.

 ・小数点は桁数を統一(通常2〜3桁)
 ・p値は,p = 0.0044 または p = 0.004(3桁丸め)
 ・95%CIは角括弧表記が一般的
 ・効果量は符号付きで報告(方向性が分かる)

記載内容のサポート

StaatAppでは自動考察機能を用いることで,解析結果の解釈や解説を取得することができます.今回分析で利用した基本統計量,クロス集計表,ロジスティック回帰分析でそれぞれ自動考察機能を利用可能です.

多変量ロジスティック回帰分析の場合,以下のように結果の解釈から,改善点まで取得することができます.

※ 自動考察機能はプレミアムプラン限定の機能となっています.

》自動考察機能

統計アプリStaatAppとは

StaatAppは計算仮定が複雑な解析手法を,誰でも手軽に行なうことができるアプリです.StaatAppの詳細は以下のページをお読みください.

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