Excelを用いたX-R管理図の作り方を解説します.管理限界値を算出するために必要な係数表も紹介しています.
X-R管理図については,以下のページで解説しています.
解説用のデータ
今回の解説で使用するデータは,1日ごとに5サンプル(n=5)を抽出したネジの長さデータの6日分になります.1日のサンプルを1つのグループ(群)として,以下のようなX-R管理図を作成する方法を解説します.


グラフ用の値の算出
管理図用のグラフを作成するために,以下のような表を作成して値を算出します.

各セルの入力式は以下のようになります.
・G3:=AVERAGEIF($C:$C, G2, $D:$D)
・G4:=MAX(IF($C:$C=G2, $D:$D)) – MIN(IF($C:$C=G2, $D:$D))
・G7:=AVERAGE($D:$D)
・G8:=G7+$G$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
・G9:=G7-$G$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
・G12:=AVERAGE($G4:$L4)
・G13:=$I$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
・G14:=$H$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
入力式と計算手順について解説します.
① データの入力
C列とD列にデータ(測定値)を入力します.C列には各データのグループ名を入力し,A群B群C群などのデータであれば,それぞれA・B・Cと入力します.
D列にはデータを入力します.
データの入力形式で重要なのが,ロングデータ形式で入力することです.各群のデータを縦に並べて,C列の1列に入力してください.
② グループ名の入力
G2セルから右のセルにC列に入力したグループ名を全て入力します.
入力した値はこの後の数式で参照するので,全く同じ値を入力してください.特に全角半角の違いは要注意です.
③ 各グループの平均値の算出
G3セルに各グループの平均値を算出します.G2セルに入力した値とC列の値が一致するグループ名のデータのみを対象に,以下の式で算出します.
=AVERAGEIF($C:$C, G2, $D:$D)
G3セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.
④ 各グループの範囲の算出
G4セルに各グループの上限値と下限値の差を算出します.G2セルに入力した値とC列の値が一致するグループ名のデータのみを対象に,以下の式で範囲を算出します.
=MAX(IF($C:$C=G2, $D:$D)) – MIN(IF($C:$C=G2, $D:$D))
G4セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.
⑤ X-管理図の中心線の値の算出
G7セルにX-管理図で使用する中心線用の値を算出します.中心線は全データの平均値になるので,以下の式で算出します.
=AVERAGE($D:$D)
G7セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.
⑥ X-管理図のUCLの値(上限管理限界値)の算出
G8セルにX-管理図で使用するUCL用の値を算出します.UCLは以下の式で求めることができます.
=全データの平均値+A2×各グループの範囲の平均値
ここで,A2は専用の係数表を参照して算出します(係数表は後ほど記載).今回であれば各グループのサンプルサイズn=5となるので,A2=0.577となります.
参考例のように事前に係数表をExcelに作成している場合は,G8セルに入力する式は以下のようになります.
=G7+$G$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
G8セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.ただし,サンプルサイズが各グループで異なる場合は,「$G$21」部分を係数表の値に合わせて変更してください.
⑦ X-管理図のLCLの値(下限管理限界値)の算出
G9セルにX-管理図で使用するLCL用の値を算出します.LCLは以下の式で求めることができます.
=全データの平均値-A2×各グループの範囲の平均値
UCLとの違いは全データの平均値に対して,足すか引くかの違いになります.A2はUCLと同様に係数表を参照します.G9セルに入力する式は以下のようになります.
=G7-$G$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
G9セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.
⑧ R管理図の中心線の値の算出
G12セルにR管理図で使用する中心線用の値を算出します.中心線は全グループの範囲の平均値になります.G12セルに入力する式は以下になります.
=AVERAGE($G4:$L4)
G12セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.
⑨ R管理図のUCLの値(上限管理限界値)の算出
G13セルにR管理図で使用するUCL用の値を算出します.UCLは以下の式で求めることができます.
=D4×各グループの範囲の平均値
ここで,D4は専用の係数表を参照して算出します.今回であれば各グループのサンプルサイズn=5となるので,D4=2.115となります.G13セルに入力する値は以下になります.
=$I$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
G13セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.ただし,サンプルサイズが各グループで異なる場合は,「$I$21」部分を係数表の値に合わせて変更してください.
⑩ R管理図のLCLの値(下限管理限界値)の算出
G14セルにR管理図で使用するLCL用の値を算出します.LCLは以下の式で求めることができます.
=D3×各グループの範囲の平均値
ここで,D3は専用の係数表を参照して算出します.今回であれば各グループのサンプルサイズn=5となるので,D3=0となります.G13セルに入力する値は以下になります.
=$H$21*AVERAGE($G$4:$L$4)
G14セルに入力した数式を,②で入力したグループ数分だけ右にコピーします.
ここまでで,管理図の作成に必要な値の算出が完了です.
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管理図による工程監視は、サブグループ集計や管理限界の計算、判定ルールの確認などが必要なため、Excelなどの表計算ソフトでは設定や数式作成に手間がかかります。複数の特性を同時に管理しようとすると、作業はさらに煩雑になります。
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折れ線グラフを用いた管理図の作成
Excelの折れ線グラフ機能を用いて,管理図を作成します.
① X‐管理図の作り方
グラフ用に算出した表から,平均値とX-管理図用の表を選択します.

対象のセルを選択した状態で,ツールバーの「挿入」→「2‐D 折れ線グラフ」→「折れ線」を選択します.

横軸の値を変更するために,作成したグラフを右クリックして「データの選択」を選択します.

「横(項目)軸ラベル」の「編集」を選択します.

「軸ラベルの範囲」に,グラフ用の値の算出②で入力したセルを選択して,「OK」を選択します.

以下のようなグラフができれば,X-管理図の完成です.

② R管理図の作り方
R管理図はX-管理図と同じ手順で,作成することができます.以下のように各グループの範囲の値が入力されたセルと,R管理図用の表を選択します.

ここからはX-管理図と全く同じ手順で,「折れ線」を選択してグラフを作成後,横軸の値を変更するために「データの選択」機能を用いて,横軸ラベルの値を指定します.
以下のようなグラフができたら,R管理図の完成です.

③ グラフデザインの調整
縦軸の値の調整や,中心線やUCL,LCLの線を変更するとより管理図らしいグラフとなります.
参考までに,藤丸は以下のようなデザインに調整しがちです.


管理図の見方については,以下のページで解説しています.
X-R管理図の係数表
X-R管理図で用いる係数表は以下になります.
| n | A2 | D3 | D4 |
| 2 | 1.88 | 0 | 3.267 |
| 3 | 1.023 | 0 | 2.575 |
| 4 | 0.729 | 0 | 2.282 |
| 5 | 0.577 | 0 | 2.115 |
| 6 | 0.483 | 0 | 2.004 |
| 7 | 0.419 | 0.076 | 1.924 |
| 8 | 0.373 | 0.136 | 1.864 |
| 9 | 0.337 | 0.184 | 1.816 |
| 10 | 0.308 | 0.223 | 1.777 |
サンプルサイズが11以上ある場合は,X-S管理図を用いるか標準偏差を用いる方法でUCL・LCLを算出します.

