本記事では,StaatAppを用いて,一元配置分散分析および多重比較(テューキー・クレーマー法)を実行し,記述統計,効果量(η²/ω²),95%信頼区間,さらにバイオリンプロットによる可視化までを一連の流れで解説します.最後に,論文へそのまま掲載できる記載例も提示します.
「ANOVAまでは実行しているが,多重比較の正しい報告方法に自信がない」「どこまで書けば論文として十分なのか分からない」という方に向けた実践ガイドです.
研究設定例
本例では,睡眠制限の程度(4水準)が単純反応時間に与える影響を検討する.研究テーマとサンプルデータの設定は以下になります.
●研究テーマ
「睡眠不足の程度が反応時間(Reaction Time)に与える影響」
●設定
・対象:100名
・独立4群として,以下の条件で測定
FullSleep(通常睡眠):32名
MildDepr(軽度の睡眠制限):27名
ModerateDepr(中等度):26名
SevereDepr(重度):25名
・アウトカム:reaction_time_ms(単純反応時間, ms)
・尺度特性:値が連続で、概ね正規性が期待できる
StaatAppでの統計処理手順
Step1:データの取り込み
StaatAppを起動して,データを取り込みます.本例で用いるサンプルデータは以下のように,4群を示す「condition」列と,計測値を示す「reaction_time_ms」列になります.

データの取り込み方法は以下のページで紹介しています.
Step2:記述統計量の算出
統計解析の手順としては群ごとの分布位置の比較を行うため,最初に平均値・標準偏差の算出は必須ですがStaatAppではテューキー・クレーマー法の解析結果として算出されるためここでは算出しません.
Step3:分布の可視化
分布を可視化するために,バイオリンプロットとストリッププロットを用いて,グラフを作成します.メニューバーから分布図機能を選択して,分布図機能画面に遷移します.

各群の反応時間の分布を可視化するので,以下のように「群名列」にcondition,「データ列」にreaction_time_msを選択して,「描画対象の選択」で制御群と処置群を描画対象に選択します.

バイオリンプロット画面で「バイオリンプロットの描画」をONに,ストリッププロット画面で「ストリッププロット」の描画をONにします.
塗りつぶし色画面で各グラフ色を好みで調整して,グラフ作成を行います.以下はデフォルト設定で描画した分布図になります.

学術論文においては,テューキー・クレーマー法の解釈補助として,バイオリンプロット+ストリッププロットで各データの分布を示すのがおすすめです.
各群の平均値と95%信頼区間を示すために,エラーバーを添付することも多いです.エラーバーは,分布図機能と同様にデータ選択を行うことで作成可能です.以下が作成例になります.

Step4:前提の確認
テューキー・クレーマー法は事前に正規性の確認と等分散性の確認を行うと査読対策としてよいです.
正規性の確認は,各群で行います.正規性の確認機能では各群で列(ワイドデータ)である必要があるため,ワイドデータに変換を行います.メニューバーから「データ操作」→「ワイドデータに変換」を選択してダイアログを表示し,「変数列」と「データ列」に対象の列を選択します.
※ サンプルデータを「データ2」に複製しておくと,この後の統計解析ではロングデータを用いるので便利です.


メニューバーから「仮説検定」→「正規性の確認」を選択して,正規性の確認用ウィンドウを表示します.
データ選択画面で各群を選択,手法選択画面でシャピロ・ウィルク検定を選択して解析を行います.例えば,FullSleepの場合は以下のような結果となります.

p値が0.05より大きく有意差が無いため,正規性を棄却できないということがわかります.本例では他の群も同様の結果が得られます.
正規Q-Qプロットを作成する場合は,手法選択画面で「正規Q-Qプロット」を選択して解析実行を行います.以下のように,正規Q-Qプロットを作成することができます.

次に等分散性の確認を行います.等分散性の確認は,3群以上の比較になるのでルビーン検定で行います.等分散性の検定画面で以下のように設定を行います.

解析実行すると,以下のような結果を得ることができます.

p値が0.05より大きく有意差が無いため,等分散性を棄却できないということがわかります.
Step5:一元配置分散分析
テューキークレーマー法の事前検定として,一元配置分散分析を行います.メニューバーから「仮説検定」→「パラメトリック検定」→「一元配置分散分析」を選択して,一元配置分散分析用のウィンドウを表示します.
データ選択画面で,以下のように分析対象群とデータ列を選択して,解析実行を行います.

解析を実行すると画面右側に解析結果が表示されます.

分散分析表を確認して,因子列のp値が0.05以下のため「睡眠欠如の程度(condition)」が反応時間(reaction_time_ms)に強い影響を及ぼしており,群間差は統計的に有意であることが示されます.
また,効果量ω²も大きい値(>0.14)で,64.4%の総変動はconditionによって説明されると解釈できます.
Step5:テューキー・クレーマー法
一元配置分散分析の事後検定として,テューキー・クレーマー法を行います.メニューバーから「仮説検定」→「多重比較」→「テューキー・クレーマー法」を選択して,テューキー・クレーマー法用のウィンドウを表示します.
一元配置分散分析と同様にデータ選択を行い,解析実行を行います.以下のように解析結果が表示されます.

各群の要約統計量と群間の検定結果が表示されます.全ての群間において有意差があることが示されています.
ここまでで,StaatAppを用いた解析手順の説明は終了です.
日本語論文の記載例
解析結果をもとに,日本語論文への記載例と添付する表のサンプルを紹介します.
1. 前提の確認
各群の正規性をShapiro–Wilk検定により確認したところ,有意な逸脱は認められなかった(FullSleep: p = 0.124,MildDepr: p = 0.617,ModerateDepr: p = 0.479,SevereDepr: p = 0.757)。また、Levene検定の結果、等分散性も満たされていた(p = 0.987).そのため,一元配置分散分析を実施した.
2. 記述統計
各群の記述統計量を表1に示す。平均(SD)は、FullSleep群 250.07(18.8),MildDepr群 264.64(17.6),ModerateDepr群 284.06(18.3)、SevereDepr群 316.94(18.9)であった.

3.一元配置分散分析(ANOVA)
一元配置分散分析の結果,睡眠条件の主効果は有意であった
F(3.0, 106.0) = 67.29, p < 0.001.
効果量(ω²)は0.64であり、大程度の効果が認められた.

4. Tukey–Kramer法による多重比較
有意な主効果が認められたため,Tukey–Kramer法による多重比較を行った.その結果,すべての群間比較において有意差が認められた(すべて p < 0.05;表3).反応時間は FullSleep群 < MildDepr群 < ModerateDepr群 < SevereDepr群 の順に段階的に増加していた.

5. 図の参照
各群の分布を図1に示す.重度睡眠制限群では分布全体が高値側へシフトしていることが視覚的にも確認できる.

表はStaatAppの解析結果をコピーして,Excelなどで体裁を変更することで作成可能です.ただし,以下の点に気を付けると良いです.
・小数点は桁数を統一(通常2〜3桁)
・p値は,p = 0.0044 または p = 0.004(3桁丸め)
・95%CIは角括弧表記が一般的
・効果量は符号付きで報告(方向性が分かる)
記載内容のサポート
StaatAppでは自動考察機能を用いることで,解析結果の解釈や解説を取得することができます.今回分析で利用した,正規性の確認,等分散性の確認,テューキー・クレーマー法でそれぞれ自動考察機能を利用可能です.
テューキー・クレーマー法の場合,以下のように結果の解釈から,改善点まで取得することができます.

※ 自動考察機能はプレミアムプラン限定の機能となっています.
統計アプリStaatAppとは
StaatAppは計算仮定が複雑な解析手法を,誰でも手軽に行なうことができるアプリです.StaatAppの詳細は以下のページをお読みください.
初めての方はほぼ全ての機能を無料で利用できるので,お気軽にダウンロードしてお使いください!

