リッカート尺度とは
リッカート尺度とは,人間を対象とした分析・研究で使用される最も一般的な評価尺度の1つになります.
1946年から1970年までミシガン大学社会研究所の教授を務めたレンシス・リッカート(Rensis Likert)によって初めて使用された尺度になります.現在では心理学から,教育,医療管理,業務管理など様々な分野で使われています.
リッカート尺度を用いたアンケートの例は以下のようになります.
Q. 自分の労働条件に対して,現在の年収は満足しているか?
1. 非常に当てはまる
2. 当てはまる
3. どちらでもない
4. 当てはまらない
5. 全く当てはまらない
リッカート尺度という言葉は聞き慣れない方でも,このような回答形式のアンケートは見慣れているかと思います.選択肢をリッカート尺度とするためには,以下の条件を満たす必要があります.
・選択肢の数を奇数にする
・選択肢の意味に連続性を持たせる
選択肢は一般的に5段階が用いられます.7段階や9段階の場合もありますが,回答者の負担が大きくなることや段階間の境界が曖昧になることを考慮する必要があります.
また,選択肢に用いる言葉は可能な限り均等な間隔になるようにする必要があります.
リッカート尺度を用いる利点
リッカート尺度を用いる最大のメリットは,結果を順序尺度として扱えることです.結果を順序尺度として扱うことで,ノンパラメトリック検定のような解析手法を用いることができます.
例えば先程のようなアンケートを,2つの企業に対して行ったとします.回答結果に対してノンパラメトリックの1つである,マンホイットニーのU検定を行うことで「2つの企業の年収の満足度に差があるか」を統計学的に判断することができます.
リッカート尺度を用いた選択肢では,一部の質問項目だけ選択肢の順序を反対にする(選択肢1を「全く当てはまらない」とする)ことで,質問内容を読んでいない回答を特定することができます.
リッカート尺度は間隔尺度なのか?
リッカート尺度は選択肢間の距離を厳密に定義することができないため,間隔尺度ではなく順序尺度とされています.「非常に当てはまる」と「当てはまる」,「当てはまる」と「どちらでもない」の間隔が等しいかどうかは分からないからです.
しかし,心理学の分野などでは得られた結果をよく間隔尺度として扱われることがあります.例えば,アンケートの回答結果の潜在的な要因を探すために,因子分析が用いられることがあります.因子分析は量的変数(比例尺度・間隔尺度)に対して行う多変量解析であり,本来は順序尺度に対して行いません.平均値についても同様です.
リッカート尺度(順序尺度)を間隔尺度として扱うかは,賛否が分かれる問題であり明確な解答はないのが現状です.個人的には統計分野で判断が分かれている以上,自分が所属する分野の慣習に従うのが無難だと考えています.
SD法(意味差判別法)
リッカート尺度と類似した選択肢の作成方法として,SD法(Scale differential scale)があります.SD法を用いたアンケートの例は以下のようになります.
Q. 自分の労働条件に対して,現在の年収は満足しているか?
当てはまる 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 当てはまらない
リッカート尺度との違いとして,個々の選択肢にラベルは付けずに極値だけラベルを付けます.個々のデータの点に説明を付ける必要がないため,SD法の方が多くの選択肢を提示することが多いです.
特にSD法では例のように,10段回の選択肢を用いることが一般的です.
SD法で得られる結果も厳密には順序尺度となりますが,リッカート尺度の結果と同様に間隔尺度として分析を行う場合もあります.
アンケート調査
リッカート尺度やSD法はアンケート調査の中で,評価尺度方式の質問として用いられます.実際にどのようにアンケート調査を行えばよいのか,アンケート結果の分析方法は以下のページで解説しています.