徹底解説

時系列データの分類

時系列データとは

時系列データとは

時系列データとは同じ対象に対して,一定間隔で観測されたデータになります.一定間隔とは例えば,1時間ごとや1日ごと,四半期ごとなど様々なパターンあります.

分析を行う上では観測時点が一定間隔であることに加えて,時系列データは以下の条件を満たす必要があります.

・時間経過ごとに並べられている
・欠測がない

特に時系列データの分析を行う上では,時間経過ごとにデータが並べられているということが重要であり基本になります.

欠測はある観測時点ではデータが得られなかったことを意味します.時系列データでない場合,欠測値を削除するといった方法で対応可能ですが,時系列データでは一定間隔の観測時点という前提が崩れるため,補完という方法で対応を行います.

》時系列分析について詳しく

定常過程・非定常過程

時系列データには定常過程と非定常過程という分類があります.定常過程とは時間経過してもデータの性質が変わらない時系列データになります.

定常過程と非定常過程の違い

例えば気温について考えてみると,毎日の気温について年間を通して見ると気温は変動します.しかし,毎年の夏はだいたい同じくらいの暑さで,冬も同じくらいの寒さです.つまり,「1年間の中での気温の変動パターン」は変わらないということです.このように,全体の性質が時間が進んでも基本的に変わらないとき,その現象は定常的,つまり時系列データは「定常過程」であると言います.

逆に,地球温暖化などの影響で年々平均気温が上がり続けた場合,「1年間の中での気温の変動パターン」が徐々に変化します.このような現象を非定常的,そのような時系列データを「非定常過程」と言います.

定常過程,特に時系列分析における弱定常過程を数学的には,「時間によって平均値・分散・自己相関が変化しない」と定義されます.

定常過程はパターンが常に一定なため時系列分析においても扱いやすい(将来予測が比較的容易)といった特徴があります.そのため定常過程を前提にした分析手法も多くあります.しかし,現実の時系列データでは非定常過程である場合が多いです.

様々な時系列データ(非定常過程)

非定常過程にはどのようなパターンの時系列データがあるか紹介します.

① 長期変動がある場合
長期変動がある時系列データ

長期変動は,データ全体における長期的な増加傾向や減少傾向を意味します.例えば,株価データで長期的な上昇傾向がある場合は長期変動を含む時系列データになります.

長期変動がある場合は,差分変換・対数変換を行うことで定常過程に変換するもしくは,長期変動を考慮した分析手法を用います.具体的にはARIMAモデルを用いたボックス・ジェンキンス法が一般的です.

》ボックス・ジェンキンス法

② 季節変動がある場合
季節変動がある時系列データ

季節変動は,季節変動や定期的なサイクル・周期性を表します.例えば,四半期ごとの売上データで第4四半期に最も売上が伸びる傾向があるため,季節変動がある時系列データになります.

季節変動がある場合は長期変動がある場合と同様に,差分変換・対数変換を行うことで定常過程に変換するもしくは,季節成分を考慮した分析手法を用います.

③ 分散が変動する場合
分散が変動する場合の時系列データ

株価データなどは時間ごとに価格変動の振れ幅が変化するため,時間によって分散が変動する時系列データであることが多いです.

実際には時系列データの分析で分散の変動を考慮することはあまりありませんが,金融分野など特定の分野では分散の変動・大きさに注目して,ARCH系モデルを用いた分析が行われます.

》ARCH系モデルの分析

④ 単位根過程
単位根過程の時系列データ

単位根過程とは差分変換した場合に,定常過程となる時系列データになります.単位根過程の中で有名なパターンがランダムウォークになります.

ランダムウォークとは一種の確率過程で,その次の状態が前の状態からランダムな変動(ステップ)によって決まるものを指します.ランダムウォークは一定の「ドリフト(一定方向への傾向)」と「ランダムショック(ランダムな変動)の組み合わせによって表されます.

単位根過程の時系列データを分析する場合は,差分変換・対数変換を行い定常過程のデータに変換してから分析・予測を行います.

非定常過程かどうかの調べ方

ここまで説明したように,時系列データが定常過程であるかどうかは,分析の手法・手順に違いが生じるため時系列分析を行う上で重要な観点になります.

非定常過程であるかを調べる方法として,一般的に使われるのがADF検定(拡張ディッキー・フラー検定)になります.ADF検定では帰無仮説を「時系列データは単位根過程である」と設定して,有意差がある場合は「その時系列データは定常過程である」と判断します.(正確には「単位根過程ではない」といった結論のはずですが,慣習的に定常過程であると判断することが多いです.)

》仮説検定とは

時系列データの分析方法

実際に時系列データに対して行う分析方法について紹介します.

① 特性を調べる(記述統計)

時系列データにどのような特徴があるかを,移動平均や自己相関係数を用いて調べます.時系列データの構成要素である,長期変動や季節変動について調べることができます.

》さらに詳しく

② 将来予測を行う(モデル作成)

時系列データの特徴から将来予測を行うためにはモデル式を作成します.モデル式の作成方法には自己回帰型モデルや状態空間モデル,機械学習モデルなど様々な方法があります.最も古典的かつ学術研究で一般的な手法は自己回帰型モデルになります.

モデルを用いることで,分散の大きさや時系列データ間の因果関係も調べることができます.

》さらに詳しく

時系列分析を行うならStaatApp

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》統計解析アプリStaatApp

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